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L'INSULTE / THE INSULT…判決 、ふたつの希望…


監督: ジアド・ドゥエイリ
キャスト:
アデル・カラム トニー・ハンナ
カメル・エル・バシャ ヤーセル・サラーメ
カミーユ・サラメ ワジュディー・ワハビー
リタ・ハイエク シリーン・ハンナ
クリスティーヌ・シューイリ マナール・サラーメ
ジャマン・アブー・アブード ナディーン・ワハビー





アカデミー賞でレバノン作品として初の外国語映画賞にノミネートされたヒューマン・ドラマ。宗教や政治が複雑に絡まりあったパレスチナ情勢を背景に、最初は個人と個人のささいな諍いだったはずが、いつしか国中を巻き込んだ泥沼の法廷闘争へと発展していくさまを描き出す。主演はアデル・カラムとカメル・エル・バシャ。監督はレバノン出身のジアド・ドゥエイリ。
 レバノンの首都ベイルート。パレスチナ難民でイスラム教徒のヤーセルは現場監督として住宅の補修作業にあたっていた。するとアパートの住人でキリスト教徒のトニーとトラブルになってしまう。翌日、ヤーセルは上司に伴われ、トニーのもとへと謝罪に赴く。神妙なヤーセルだったが、トニーの放ったある一言に感情を抑えられず、思わず手を上げてしまう。ついに2人の対立は法廷へと持ち込まれるが、弁護士同士の激論は火に油を注ぐ結果に。そこにメディアが飛びつき、事態はトニーとヤーセルの思惑を超えてレバノン全土を巻き込んだ巨大な政治問題へと発展してしまうのだったが…。





"初めからケンカ腰"とはよく言ったもので、最初っから対決姿勢剥き出しでヤル気満々、其処には理屈もヘッタクレも無い。否、理屈が無いと言うよりも、先ずは闘い有りきで理屈は後から付いて来る。従って、どんな説明も釈明も通用しない。

レバノン人のトニーは正にそんな風情で登場し、理由を知らされない私達に強烈な印象を与えます。一方、パレスチナ難民のヤーセルは爆発する感情を押さえ込もうと苦悩する抑制的な人物として描かれ、これまたミステリアスな印象。しかし、いずれも不安定な中東情勢によって引き起こされた悲劇の被害者である事が徐々に明らかになり、二人の背負う歴史と傷ついた心情を慮れば、理屈抜きで実に切ないのです。

他方、そもそもは政治信条や信仰を越えた齟齬であるにも関わらず、偶々対峙したに過ぎない二人の間に交わされた感情の軋みが社会問題へと増幅される様子は実に空虚に見えます。敵対する弁護士の争いは、金満的な父親と自由思想の娘との軋轢に置き換えられ、社会を二分する世論の対立は当事者を置き去りにした暴力の応酬として描かれます。審判で裁かれる筈の個vs個の争いは遂には迷走し、下された審判では本質的な解決には至らないのです。

究極の和解は個のレベルに回帰するのか…そんな暗示がラストに呈されますが、その答えは既に序盤に現れています。トニーと同じ不幸な体験を味わった彼の父親の呟き『お前はやり過ぎだ』。
政情不安と宗教的対立に揺れるレバノンを舞台に描かれているのは、個々の奥底に潜む歪んだ心情。社会派の衣を纏いつつ、普遍的なテーマを語る作品でした。












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  •   18, 2018 21:00
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